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新型コロナウイルス感染症が5類感染症になってから1年半が過ぎた。巷では「コロナを受け入れた病院は補助金で儲かった」と思われている。確かに、補助してもらって助かった。しかし、儲かっていない。そこには空床補償という立て付けの裏側がある。当院は50床の病棟を潰して30床のコロナ病棟を作った。当時、愛知県で最大である。コロナの入院受け入れを始めた時、空床補償の補助金もなければ、見通しも立っていなかった。むしろ院内感染でも起こしたら、記者会見を開く世情であったため、場合によっては患者さんやスタッフが病院から離れていく可能性すらあった。
「空床補償」はあくまでも「空床の補償」なのである。前述のように当院は30床設け、最大35名まで入院患者は上った。30床満床になって、スタッフの限界を超えた状態で20床分の補助金が出る。しかし、50床を潰して5床しかコロナ病床を設けなかったらどうなるであろうか。5名の入院で満床になり、スタッフの負担も最小限で、かつ45床分の補助金が出るのである。この矛盾、やるせない。背伸びを超えて頑張っている医療機関の方が負担も大きい上に補助金が少ない、という事実。我々がコロナの入院を受け入れて2ヶ月後くらいにこの空床補償の補助金が始まった。補助金が目当てで入院の受け入れを始めたわけではない当院にとって、この矛盾は方針を変更するには意味をなさなかった。最終的に5類に変わるまでに1460人ほどの入院を受け入れた。愛知県で最大級だろう。当院が貫いたのは、理念である。「断らない医療を通じて、安心安全な医療・療養環境を提供する」と掲げておいて、コロナは断る、そんなカッコ悪いことはうちのスタッフや創業者である先代は許さないのではなかろうか。守るべきものは、病院の存在意義である理念だ、ということを具現化したまでである。
こういうスピリットを掲げた当院が昨年の元旦に発災した能登半島地震で発災翌朝に能登へ向けて出発することは至極自然なことである。メディアも辿り着いていない発災翌日の珠洲市は、自衛隊や消防も医療機関もまともに入れていないという状態であった。爆心地の珠洲市総合病院のスタッフは、各々が被災者であるにも関わらず、発災から(メンバーによっては発災前の勤務中から)ずっと休みなく働き続けているのである。我々が到着した時、アドレナリン出っ放しの彼らの目は常軌を逸していた。直感的に彼らの身の危険を感じた。我々は彼らに「一旦休んで!」とお願いしたが、走り続けていた彼らは休み方もわからない状態になっており、右往左往している状態であった。1月2日の夜勤帯の救急外来は当院のスタッフで回すことにした。まずは強制的に彼らに休んでもらわないと、この病院の医療は根本から破綻する寸前であった。翌日の午前中には各県のDMATが入って来た。DMATに属した医師は、救急専門医以外の様々な専門の医師が多い。被災地では前述の通り、病院ないし行政が管轄する避難所も医療スタッフは走り続けているため、いろいろなところに災害医療救援のニーズがある。DMATの各医師の専門に応じて、適材適所に当たるように指示した。DMATは指揮命令に則って動いているのが強みであるが、それ故に機動力を損ねている現状もある。となると、DMATではない当院の災害医療救援派遣は、DMATよりも最前線に早く入ることですでに疲弊している被災地の医療機関のスタッフたちに寄り添うことができる。
創業時から守り抜いてきた「断らない医療」は多くのスタッフの弛まぬ努力により、堅持することができた。そして様々な形で昇華している。急性期医療、新興感染症、災害医療、死因究明。どれひとつとっても手を抜くことが許されず、それぞれが大きな社会貢献となっている。社会貢献をみんなで部署を越えてやり切る。これってカッコイイじゃないですか。それぞれのキャパシティーを越えて、やりきって来たのは、法人が一丸となってこれに向き合うからだろう。こんなカッコイイ医療機関、他にあるだろうか?私の知る限りない。今年も医療法人医仁会が飛躍しなくてはならない。患者さん、地域の方、そして何より当法人のスタッフの協力と働きかけでこれを果たしていくことをここにお約束いたします。