診療看護師(NP)の紹介
診療看護師(Nurse Practitioner:NP)とは大学院の修士課程において、医学の知識と初期医療に関する実践を修了した看護師です。医師が何らかの事情により患者さんへの対応が困難な場合に、迅速かつ安全な医療を提供することが当院での診療看護師の大きな役割の一つとなります。この中には、あらかじめ作成した手順書によって『包括的指示』により実施する特定行為(後述)と、医師からの『具体的指示(直接指示)』により実施する相対的医行為(特定行為を除く)があります。相対的医行為の例として、腹腔穿刺、気管内挿管、ERでの救急対応、手術助手などがあります。また、患者管理の一端として、検査や処方などを代行入力することもあります。
診療看護師は、従来の看護師よりも侵襲の高い処置が実施できるだけではありません。患者さんを全体で捉えられるように疾患に対する基礎知識や治療内容などについても専門的な教育を受けていますので、医師不在時でも患者さんの病状をタイムリーにとらえ、検査や処置を行い、適切な説明を行うことが可能です。治療方針などを的確に理解し、治療と看護の両方の視点から患者さんや家族に関れることも特徴です。
医療の質・安全性を担保して円滑な医療を提供すること、医師―看護師―多職種と連携してチーム医療の中心的役割を担うこと、看護の質の向上に貢献することを目標に、これから努力してまいりますのでよろしくお願いします。
診療看護師(NP)の紹介
さくら総合病院の診療看護師をご紹介いたします。
柿山 智之(病棟師長)
私は2018年に診療看護師の資格を取得後、大学病院で1年間の研修を経て、さくら総合病院へ就職しました。当院では3A病棟(消化器外科、脳外科)師長として、管理業務をしながら診療看護師として活動しております。治療と看護の両方の側面から患者様に関わり、満足度の高い医療の提供を目標に努力して参ります。また、看護スタッフへの教育を通じ、看護の質をより向上できるように貢献していきたいと考えております。
診療看護師Q&A
診療看護師と特定行為に係わる看護師の違いはなんですか。
診療看護師も特定行為に係わる看護師も厚生労働省が認定している特定行為、21区分38行為を全て、あるいは部分的に実践ができます。しかし、診療看護師は包括的指示による特定行為の実践だけではなく、医師からの直接指示による相対的医行為を実践できるように教育を受けます。
診療看護師ができる相対的医行為にはどのようなものがありますか。
厚生労働省が指定している特定行為も相対的医行為に含まれます。その他、医師の直接指示による相対的医行為も実践しますが、この中には手術助手、麻酔管理、胸腔・腹腔穿刺、挿管などがあります。
診療看護師は手術や処方などもできますか。
診断、手術執刀、処方は代表的な絶対的医行為となります。これができるのは医師だけであり、診療看護師はできません。ただし、施設によっては処方や検査オーダーなどの代行入力を診療看護師が業務として担うことがあります。
診療看護師になるためにはどうすればよいですか。
診療看護師となるためには、看護師免許取得後、最短7年間が必要となります。具体的には以下の通りです。
Step 1
看護師免許取得後、5年以上の看護実務経験を積む。
Step 2
診療看護師を養成している日本NP教育大学院協議会が認定する、診療看護師教育課程を有する大学院へ進学し、必要な単位を取得したのちに修士論文の審査や試験の合格(各大学院により異なる)を経て卒業する。
Step3
日本NP教育大学院協議会が実施する、NP認定試験を受験して合格する。
診療看護師とはどのような資格ですか。
日本NP教育大学院協議会が認定した修士課程を修了し、同協議会が実施するNP認定試験合格者に与えられる資格です。看護師や保健師のように厚生労働省が認定する国家資格ではなく、民間団体の資格となります。
診療看護師と一般的な看護師で給与面の違いはありますか。
診療看護師は「診療看護師(NP)資格」を有しており、多くの施設が資格手当を付与しています。また、施設によっては診療部所属となるため、一般的な看護師と給与体系が異なる場合もあります。
特定行為とは
診療の補助であり、厚生労働省により要件を定められた研修を修了した看護師が、手順書に基づいて包括的に実施することができる21区分38行為のことです。呼吸器関係、循環器関係、栄養関係、創傷治癒、動脈血、透析、インスリン、抗精神病薬と急性期から慢性期まで幅広く含まれています。特定行為の実施には実践的な理解力、思考力及び判断力並びに高度かつ専門的な知識及び技能が必要とされます。
特定行為区分の名称 | 特定行為 |
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呼吸器(気道確保に係るもの)関連 | 経口用気管チューブ又は経鼻用気管チューブの位置の調整 |
呼吸器(人工呼吸療法に係るもの)関連 | 侵襲的陽圧換気の設定の変更 |
非侵襲的陽圧換気の設定の変更 | |
人工呼吸管理がなされている者に対する鎮静薬の投与量の調整 | |
人工呼吸器からの離脱 | |
呼吸器(長期呼吸療法に係るもの)関連 | 気管カニューレの交換 |
循環器関連 | 一時的ペースメーカの操作及び管理 |
一時的ペースメーカリードの抜去 | |
経皮的心肺補助装置の操作及び管理 | |
大動脈内バルーンパンピングからの離脱を行うときの補助の頻度の調整 | |
心嚢ドレーン管理関連 | 心嚢ドレーンの抜去 |
胸腔ドレーン管理関連 | 低圧胸腔内持続吸引器の吸引圧の設定及びその変更 |
胸腔ドレーンの抜去 | |
腹腔ドレーン管理関連 | 腹腔ドレーンの抜去(腹腔内に留置された穿刺針の抜針を含む。) |
ろう孔管理関連 | 胃ろうカテーテル若しくは腸ろうカテーテル又は胃ろうボタンの交換 |
膀胱ろうカテーテルの交換 | |
栄養に係るカテーテル管理(中心静脈カテーテル管理)関連 | 中心静脈カテーテルの抜去 |
栄養に係るカテーテル管理(末梢留置型中心静脈注射用カテーテル管理)関連 | 末梢留置型中心静脈注射用カテーテルの挿入 |
創傷管理関連 | 褥瘡又は慢性創傷の治療における血流のない壊死組織の除去 |
創傷に対する陰圧閉鎖療法 | |
創部ドレーン管理関連 | 創部ドレーンの抜去 |
動脈血液ガス分析関連 | 直接動脈穿刺法による採血 |
橈骨動脈ラインの確保 | |
透析管理関連 | 急性血液浄化療法における血液透析器又は血液透析濾過器の操作及び管理 |
栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連 | 持続点滴中の高カロリー輸液の投与量の調整 |
脱水症状に対する輸液による補正 | |
感染に係る薬剤投与関連 | 感染徴候がある者に対する薬剤の臨時の投与 |
血糖コントロールに係る薬剤投与関連 | インスリンの投与量の調整 |
術後疼痛管理関連 | 硬膜外カテーテルによる鎮痛剤の投与及び投与量の調整 |
循環動態に係る薬剤投与関連 | 持続点滴中のカテコラミンの投与量の調整 |
持続点滴中のナトリウム、カリウム又はクロールの投与量の調整 | |
持続点滴中の降圧剤の投与量の調整 | |
持続点滴中の糖質輸液又は電解質輸液の投与量の調整 | |
持続点滴中の利尿剤の投与量の調整 | |
精神及び神経症状に係る薬剤投与関連 | 抗けいれん剤の臨時の投与 |
抗精神病薬の臨時の投与 | |
抗不安薬の臨時の投与 | |
皮膚損傷に係る薬剤投与関連 | 抗癌剤その他の薬剤が血管外に漏出したときのステロイド薬の局所注射及び投与量の調整 |